2014年11月18日火曜日

【コンプライアンスメモ】EPUBにおけるMORISAWAフォント埋め込み可否について問い合わせの記録


EPUB3作成時、フォントの埋め込みについてライセンス上の縛りを確認したかったので検索してみたところ、いくつか情報はあるものの、どうも根拠がはっきりしないのでモリサワのケースについて、問い合わせをした記録です。本当はフォントメーカー各社に確認しようと思っていましたが、割と大手のモリサワの対応をみて、問い合わせる意味も無いと感じましたのでやめました。

結論的なこと

端的には、EPUB作成時のフォント埋め込みは考えない方が、精神衛生上良いでしょう。フォント・ワークスはOK(=サブセット埋め込みを明確に許諾している)である一方で、モリサワはNGであり、OS組み込みフォント(日本語/欧文)の扱いの確認なども含めて追求しだすとキリが無いだろうな、という感じです。

モリサワフォントの見解

モリサワパスポートの使用許諾(モリサワ公式サイト)を前提として、問い合わせフォームから、以下のような内容で投下。
EPUB3として、フォントを埋め込んで配信することは、使用許諾の「インターネットによる送信可能化及び公衆送信」に当たり問題ないでしょうか? 埋め込む時点で第4条(禁止事項)の「フォントの文字情報」に抵触するようにも思われますが定義が不明確なため確認させてください。 (アウトライン及び埋め込みいずれも)PDF配布はごく一般的に行われている現状があるほか、御社のMCBookではepub3へのエクスポートが可能なようですので、問題ないのではないかとも考えましたが、公式な回答をいただきたく。

それに対する回答がこちら。サポートからの回答メールの抜粋です。
Q1:  EPUB3として、フォントを埋め込んで配信することは、使用許諾の「インターネットによる送信可能化及び公衆送信」に当たるため問題ないでしょうか?
A1:  弊社フォントのEPUBへの埋込は許諾外となります。  よって、埋込み自体ができません。  尚、弊社MCBookでは、弊社フォントを埋込んだEPUBデータの作成はできません。「エクスポートが可能」とのご認識は異なっておりますのでご案内いたします。恐らく、エクスポートは、弊社専用ビューアへのフォント埋込みの事を誤解された内容ではないかと推測いたします。

許諾外だから許諾外なのよ、という感じで根拠が明示されていません。「配信可能云々を議論する前に、埋め込みが許諾外なのだ」ということを言いたいのでしょうけれども…、フォントメーカーサポートの割に残念な日本語です。

同様の問い合わせをされたと思われる
http://jittodesign.org/epub-font-310/
にも、同様の返答があった旨ありますね。

根拠を知りたいので、次のように返信してみました。

許諾外ということで了解しました。
コンプライアンスのために追加で確認させていただきたいのですが、
epubの件、第4条(禁止事項)3に抵触するという理解になると思いますが、
◎PDFにおけるフォント埋め込み(文字情報にあたる)
◎アウトラインをとったフォントを配置しているai,pdf等のファイル(代替にあたる)
等も許諾外ということになりますでしょうか?
(万が一許諾内ということでしたらepubの場合のみ許諾外である根拠をご教示いただけると幸いです)
pdfの埋め込みやアウトラインをとったaiファイルの配布については、実は問題ないという見解であること(モリサワ公式サイト「モリサワフォントの商業利用に関して」)は知っていましたが、epubはダメということの整合性が分からなかったので、合わせて確認してみました。

で、その返答。
 PDF、Aiのアウトラインデータ等への埋込利用につきましては、
 4条の禁止事項に基づき、以下の通りとなります。

 ・PDF
   PDFに埋め込まれたフォント・文字情報は第三者が取り出せず、
   単独でフォントとして利用することができません。
   そのため、第三者はPDFファイルと離れて文字情報を利用する
   ことができませんので、使用許諾範囲内となります。

 ・Aiのアウトラインデータ等
   文字情報の含まれるアウトラインデータを第三者に交付する場合でも、
   同じフォーマット及び同じフォント製品のライセンス取得者に利用
   させる場合のほか、第三者がアウトラインデータを改変しない場合
   に限り、使用許諾範囲内となります。

 尚、epubの件、第4条(禁止事項)6項の「台数を超えるデバイスに
 より使用する」が可能となる事が許諾外の判断となります。

言葉遣いが怪しいところは許したとしても、使用許諾の文面からは読み取るのは難しい解釈が続く感じです。ビジネスモデルが先にあって、規約整備が追いついていない現状でしょうか。特にepub埋め込みが許諾外の根拠=第4条(禁止事項)6項。これは筋が悪いように思われます。問い合わせ時点の表記は次のようになっていて、素直に読めば故意性(目的性)がなければ問題がないように見受けられます。



実はアウトラインデータについても、(目的と)その取扱いによってはアウトになり得る危ういものであることが確認できたのは良かったです。
裁判までする覚悟がなければ、結局のところはメーカー解釈で許諾は決まるので、(一応の根拠がわかれば)もう突っ込む必要はないのですが、上記を踏まえて、最後に以下のように返信しておきました。

さらに追加で一点だけ確認させてください。
EPUB3のフォーマットにおいて御社フォントを表現したい場合、「アウトライン化したうえでepub3へ変換」の一択ということになりますでしょうか。
※デバイスに元々インストールされている場合を除く

また、以下は、要望ですので、ご検討いただければ幸いです。 ◎現在の使用許諾に関しては、ご回答いただいたような一意な解釈は難しいので、一般にはなかなか周知されていないように思われます。 (最終的には御社の解釈により許諾外という回答を頂いたので)判断を覆したいということではありませんが、epub3が許諾外の根拠として挙げられた、第4条の6は「可能性」を問題としておらず、「目的」の有無を問題にしている条文に読めます。つまり、epubから一定の方法で「本フォントをライセンス証明書等により指定される台数を超えるデバイスにより使用する」ことはできるのかもしれませんが、その使用がepub電子書籍の「目的」ではないのは明らかなので第4条の6は当たらないという解釈もできます。また、DRM等プロテクトがあれば良いのか、サブセットだったら良いではないかなどの追加的な疑問も生じなくもありません。いずれにせよ、aiアウトラインの件もそうですが、故意の有無によって違反になったりならなかったりするのは、わかりづらいと思います。 ◎特に、最新のAdobe Indesign CC(2014.1)では、固定レイアウトのepub3で保存する際等、サブセットフォントを埋め込みますので、気付かない(故意ではない)埋め込みをしてしまうことがあり得ます。割と徹底した周知が必要ではないでしょうか?  ◎関連して、御社サイトのMCBOOKの説明にはepub3でエクスポート可能とあるだけで、(割と重要な)埋め込みができない旨の記載が無いのは、いささか不誠実ではないかと感じる人もいるのではないでしょうか。
これについても丁寧に返答をいただいています。

現状、epub(電子書籍)での運用として弊社製品MCBOOKでの制作環境をご提供しておりますが、別の選択肢としては、ご理解いただいている手法も一つ と思われます。 また、貴重なご意見、誠にありがとうございました。 ご指摘いただきましたMCBOOKでのフォント埋込みの件は、正確な情報をご提供 するように関連部門にて判断させるようにいたします。 今回、お問い合わせいただきました内容が、epubでのフォント埋込みが最初で すが、利便性を求めた技術と、弊社フォントビジネスとしての許諾が関連した 内容となります。 個々の事例につきましては、一部下記Webでご案内しておりますが、弊社フォン ト製品「エンドユーザライセンス契約書」には記載されておりません。 【商業利用に関して】 http://www.morisawa.co.jp/font/products/terms/commercialUse.html ご不明な際は、弊社サポートまでお問い合わせいただけますようお願いいたします。 尚、Adobe社製ソフトの場合は、「サードパーティ製ソフトウェアのライセンスに関する注意事項とその他の条件について」との文書が公開されており、英文で「個々の製品の著作権表示」を確認するよう注意喚起されています。
以上、ご理解いただけますようお願いいたします。

 以上です。

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